LED フレットレスギター

ポジションマーカーにneopixel(ws2812b)フルカラーLEDを搭載して、MPU6050(加速度・ジャイロ)をギターのボディに搭載、Particle Argon(ESP32/nRF52)でThread Mesh(IPv6/Bluetooth) Gatewayになるギターを作成した。

もちろんシールドからアンプを通すと音は鳴る。ネタ的にやってみたかったHD、アンプ&オーバードライブ回路付きのスピーカーに接続して音を出してみた。

フレットレスギターを作って弾いてみて分かった事は、自分がどれだけフレットに依存してギターを弾いてきたのか(というか、そういう楽器なのだけど)ということだった。押さえる所が少し変わるだけで、音が凄まじく変わる。すぐ弾けるか?というと、練習が必要になってきた。良い点としては、中間の音を出せるようになった。例えば、C, C#の間の音も簡単に出せる。スライドさせると面白い音が出るから、ワウと組合わせて使うと楽しくなりそう。スライドを多用して弾くことになりそうな気がしている。

という事で、このギターの作りかたを残しておく。ちなみに、ギターを分解してここまで改造するのは自分は初めてだ。

1.ギターを分解する

まずはギターを分解する。自分は何本かギターを持っている。それらの1本を使って…というのはあまりにもチャレンジングすぎるから、ヤフオクで2,500円のギターを1本入手した。昔は持っていたストラトの形状のギターだ。ストラトタイプというのが後々に電池(LiPo)を格納する場所で利点を発揮する、というのはこの時はまだ気づいていなかった。まずはネジ類を取ってギターを分解する。

2.フレットレス化

最初の目標通りフレットレスギター化をする。フレットをペンチを使って指板から全部抜いてしまう。

次に抜いたフレットの溝をエキポシ樹脂で埋めていく。エキポシはキャンドゥーで何個かゲットしてきた。マスキングテープでネック部分に付かないように保護してから行った。塗りたくったら24時間放置して固まるのを待つ。

エキポシが固まったら、ひたすらヤスリをかけてエキポシの凹凸が無くなるように磨く。ヤスリも100均でゲットした紙やすり(60, 120, 240)を使った。仕上げにスポンジヤスリ(240番)を使って、良い感じに滑らかにする。

これでフレットレス化は完了で、さらにエキポシを指板に塗って、弦高調整でヤスリを再度かけるとフレットレスギターとして使えるようになる。ここで、指板にLEDを仕込んでは?という甘い誘惑に乗って、ここから指板分離という作業にとりかかることにした。未知の作業ほど楽しいものは無い。

3.指板分離とネックのLED化

まず最初に沸いた疑問は、指板ってそもそもネックから取れるの?という事だった。シリコンラバーヒーターを使って指板とネックの接着剤に熱を与えて、上手い具合に少しづつ分離できるような事は書いてあったりした。ただ、シリコンヒーターを持っていないため、スチームアイロンを使うことにした。布をネックの上において、その上から蒸気と熱をバンバン与えていく。本当は金属ヘラを使ってネックと指板を少しづつ分離していくようだけど、この時は金属ヘラが無かったから包丁を指板とネックの間に差し込んでみたら、少しづつ分離することができた。


ネックに包丁が突き刺さっているのは、あまりにも作業としても危険でシュールすぎるから、指板の分離が出来ることをここでは確認して、金属ヘラをダイソーで入手して作業を続けることに。指板が割れてしまわないよう、慎重に少しづつ分離した。

幅広と細い物の2本の金属ヘラとスチームアイロンを使って、少しづつ接着材を溶かして指板とネックの分離をすることが出来た。当然だけど包丁を使うより、金属ヘラを使う方が遥かに効率が良かった。

次にポジションマーカーの部分をLEDで光らせるため、ドリルでポジションマーカーに穴を開けていく。指板にドリルを当てるというのは、なかなか緊張する。ドリルは細いのから太いのまで順番に交換しながら、指板に穴を開けていく。

ポジションマーカーに穴が開いたら、動作確認としてLEDをポジションマーカーの裏から光らせてみて、期待通りに光るかどうかを確認した。良い感じに光りそうでちょっとここで一安心。

次はLEDを仕込んで固定・導線の経路の確保をする。neopixelことws2812bは指板のポジションマーカーの部分に仕込むことにした。そして導線はトラスロッドの部分を利用することが出来る。テープLEDの幅とトラスロッドの溝が良い感じに合致するという幸運を利用するとにした。

そして、LEDは多少高さがあるから、ポジションマーカーの部分(指板の後ろ側)をLEDのサイズに合わせて彫刻刀とヤスリを使って調整する。この時、指板とネックをクランプする次の作業を考えていて、LEDがクランプの圧力や弾いている時にダメージを受けないよう、良い感じにポジションマーカーに収まるよう意識して調整していった。

導線の確保は12フレット以外はそのままトラスロッドが使えるものの、12フレット部分はポジションマーカーが上下にあるため、ネックの12フレットの部分にLEDと導線を確保するための溝を入れてあげた。

いよいよLEDを装着する。テープLEDを1個づつ切り取って、ポジションマーカーの部分に合わせて導線をつないでいく。あと、トラスロッドには絶縁テープを貼っておく。LEDと導線は指板に超強力両面テープ(3Mとかの)で固定してあげた。指板とネックを合わせた時に圧力や弾いている時の衝撃でLEDが壊れてしまわないよう、この辺は地味に注意をしつつ行った。というのも、ネックと指板を接着してしまうと、LEDや導線はもう二度と手を入れられない部分になるから、自分が弾いたりギターを扱う時の衝撃を想定して作業をした。

指板とネックを接着するまえに、ポジションマーカーを作成していく。元々あったポジションマーカーはドリルで見事に貫通させちゃったから、東急ハンズで5mm アクリル棒をゲットしてきてポジションマーカーとして利用することにした。良い感じの長さで切り取ったらポジションマーカーに入れて、指板を傷めないようにヤスリで綺麗に高さを調整した。

この時、弦を指で押さえた時の衝撃で、アクリルからLEDに衝撃が加わってLEDが破損される事が考えられた。エキポシで指板を再度コーティングして保護するとしても、押弦した時の繰り返し衝撃にLEDは間違いなく耐えることが出来ないと思っていて、これを解決しないといけない課題の一つだと考えていた。

最初はポジションマーカーの中をグルーで埋めて緩衝にさせて、その上からアクリルをはめ込もうか…と考えた。ただ、幸運なことにアクリルを差し込んでみて分かったのが、ドリルで開けた指板表面ポジションマーカーの径が広く、指板裏のLED側の径が狭くなっていた。つまり、どんなにポジションマーカーを押し込んでもLEDまでアクリルが到達しない、ろうと状の構造に全ポジションマーカーがなっていた。という事で、安心して全ポジションマーカーにアクリル棒を切ってバンバン埋めていく。(ろうと状の構造になっていなかったら、グルーでLED保護の緩衝を流し込んで、その上からアクリル棒の外面に接着剤を塗ってポジションマーカーとしてはめ込んだと思う。なるべくLEDに衝撃が伝わらないように。)

ここまで出来たら、LEDの点灯確認をする。次はいよいよ、指板とネックの接着になる。接着したら、もう二度とLEDや導線に手を出すことが出来なくなる。失敗したら、また指板分離すれば良いのかもだけど、もう分離しないぜ!!といった気持ちで接着をすることにする。

教えてもらった、楽器とかで利用される木工用で強力なタイトボンドを指板・ネックに塗りたくって、あて木をしてからクランプする。この時が最高にドキドキする時だった。LED・導線が圧力で壊れてしまったら、ここまでの努力が水の泡に。色々と気を使った事を信じて、思いっきりクランプして1日放置した。

1日クランプしたまま放置して、ドキドキのLED点灯の瞬間…見事に全部OKだった。ほんと、心からほっと一安心した瞬間だった。ネックのLED部分が出来ればもう安心だ。

そして、次はまた指板の保護としてマスキングテープでネック部分を保護して、全体にエキポシを塗りたくって1日放置する。フレットレスだから弦で指板にダメージが発生するのと、弦高調整、弾くときにスライドが滑らかになる効果、押弦した時に弦の振動を木よりも固いエキポシの方が良いだろう、という色々な効果を期待して塗りたくった。1日放置して紙やすりでエキポシをひたすら磨いていく。

次にボディ側に導線を確保するためにドリルで穴をあけた。ギターのボディに直接ドリルを入れるのは何気にドキドキする。LEDの導線をネックのジョイント部にドリルで開けた穴を通じて、ボディの中に引き込んでいく。LEDの制御はボディのどこかの空間でやればOKだろう、くらいの感じで考えていた。

ちなみに、このネックのジョイント部にあるドリルの”ためらい傷”のような大量の穴の痕跡は自分がやった物ではない。最初からついていたもので、この大量のためらい傷は一体何なんだろう…?

何はともあれ、まずはネックから出ている導線部分を樹脂で保護することに。この部分は弾いている時に圧力がメチャクチャかかる部分で、何か不測の圧がかかって断線しないように、とりあえず導線部分をかるくグルーで保護してあげた。そして、ネックとボディをジョイントするときに導線がダメージをうけないよう、ボディにドリルで開ける穴と導線の位置をよく確かめてから、ドリルで導線用の穴を確保した。

ネックとジョイントさせてLEDの動作確認をして問題が無いことを確認。あと使い捨ての弦(1セット270円をゲットしていた)を張って、実際にテンションをかけても問題なく動作する事の確認をした。ネックにテンションがかかった時に何かあるかもしれない…というドキドキ感があった。

あと、ここで指板に塗りたくったエキポシをヤスリで磨いて、弦高調整をした。 ちゃんと各ポジションで音が響くように ナットを少し溝切をして、サドルを調整しつつ、指板(エキポシ)を磨いていくことに。何気にこの弦高調整がメチャクチャきつかった。テンションをかけて確認しながら、緩めてエキポシを磨いて実際に音を出して…の繰り返し。

4.ボディの配線と端末格納

一通りネック側が出来たら、今度はボディの加工に移っていく。

ボディに空間を躊躇なくあけた。どこに端末を格納するための空間を用意するか考えた結果、ピックガード裏に空間を作ることにした。理由としてはピックガードで空間を隠すことが出来るから。あとネックからのLED導線をなるべく近くで終端させてあげたかったから。ちなみにボディの鳴りという部分はとっくに諦めている。

マーカーでサイズを決めたら彫刻刀でひたすら掘っていく。何気に大変だったのが、ボディの塗装が思ったより厚くて、最初は彫刻刀の刃が入らなかった。そこで、ドリルを何か所かあてて塗装と表面の樹脂を取ってから、ボディの木材を彫刻刀で穴をあけていった。ボディの鳴りという部分は、この塗装・樹脂・木材が一体となって効いてくるというのを実感した瞬間だった。

一通り空間が出来たら、空間にエキポシを塗りたくって、木材の表面をコーティングした。

最後に端末を格納していく。ここで利用したのは端末にはParticle Argon(ESP 32/nRF52)とMPU 6050(加速度・ジャイロ)センサーになる。格納する空間がわりと広いから、他の端末やセンサーを入れてこれからも遊ぶことが出来るようになっている。他にもギターがThread(6LoWPAN, IPv6/Bluetooth)のGatewayとしても利用できるネットワーク端末にもなる。

端末自体はWeb上でプログラミングをしてWiFi経由でアプリを流し込めるから、ピックガードを閉じた後でもLEDの光り方やセンサーの扱い方をリモートで変更することも出来るようになっている。加速度・ジャイロでギターの動きや弦の振動からLEDの点灯制御をしてみたけど、プログラミングがリモートで色々と変えられるという便利さもあって、他にも色々と遊んでいけそうだ。

電源はトレモロユニットの部分に格納することにした。当初はボディに開けた空間に端末と一緒に格納しようと思ったものの、電池交換するため「弦を外してピックガードを外す」のはさすがにムリがある。

そこで、ボリュームからボディ裏のトレモロユニットに抜けているアース線の穴を利用することにした。端末を格納している空間からボリュームやトーンのある空間にドリルで穴をあけて、そこからアース線と同様にトレモロユニット側に電源を通していく。LiPoはマジックテープでボディと合わせて固定する。これで、LiPoの交換は裏カバーを外していつでも出来るようになった。耐衝撃性もそれほど悪くないだろう…

とりあえず完成。ちゃんとアンプを通して音を出して爆音で弾くことも出来る。 まとめ的に、やってみて分かった事とかは…

・ギターのクラフトマン凄い。自分は”とりあえずやってみた”だけど、こんな自分の作業の比較じゃないほど凄い質と量をこなしているクラフトマン、マジで凄いというのを実感した。
・フレットを外す時にナットも一緒に外して作業すれば良かった。何で外さなかったのか…
・ヘッドのロゴの所に思わずMaker Faire Bay Areaで貰ったステッカーを張ってみた。
・弦高調整で指板をヤスリかけて、エポキシを磨いて調整したけど、ハンドサンダーを最初に使って荒く磨いた方が楽だった。手でやるのマジで辛かった。ただ感覚的な所で、最後は手で磨くことになると思われ。
・ギターのネックにLEDの他にも静電容量センサでも仕込んで、弦無しで指板上を触れると音が鳴る、とかも面白いと思ったり。
・他にもセンサーを付けたり、内部にエフェクタ機能を入れても面白そう。ネックのLED化と外部電源無しに単体で遊べるから、音をいじったりもしたい感じ。

ギターの改造は一度はやってみたかったから、未知の作業や”多分、こうじゃないかなぁ…”みたいな感じでメチャクチャ面白かった。

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