続きはまた。
地下から見た光〜土合駅
何となくふと思い立って、土合駅に行きたくなった。急に雪を見たくなったのと、昔電車で通り過ぎたことがあって、今度は駅に降りてみたくなったからだ。
始発で向かって、電車の中ではLed Zeppelin、OASISを聞きながら寝て、スキーやスノボを持ってゲレンデに向かう人達に囲まれながら約3時間、ようやく土合駅に到着した。
降りるときに、スキーに向かう大学生たちが、「こんな駅で降りるなんて、よっぽどの物好きか何かじゃね」と言っているのが聞こえた。そんな自分は物好きなのかも知れない。ちなみに自分は鉄っちゃんでは無い。雪と非現実な駅を体験しに、まるで遊園地のアトラクションでも楽しみに行くような感覚で土合駅に降りた。
ここからひたすら460段、70m超の高低差のある階段を登っていく。400段の階段というとピンとこない。何となくサクッと登れそうな気もする。1000段とか桁が変わると、さすがに大丈夫かな?と思ったりするけど、460段だったら簡単に登れそうな気がしてくる。
そんな思いは途中で打ち砕かれて、自分の体力の無さを思い知ることになった。
ひたすら階段を登っていく。土合駅は氷点下近くですごく寒いと思って、コートにマフラーで寒さ対策をして行ったのに、登っていく間に体は温まっていく。寒さは何も感じない、むしろコートやマフラーが邪魔になるほどだ。ふと登ってきた階段を見下ろしてみた。
見下ろすと、そこに居たはずのホームが点ほどにも見えない。地下に向かって、無限ループのように続く階段と手すり、照明とトンネルがあるだけだ。何か幻覚かVRのような物でも見ているような感覚になってくる。つい数分前、この無限ループの先に自分が居たという現実が実は作られた物だったという気すらしてくる。
階段を登っていくと、ようやくゴールが見えてくる。薄暗いトンネルの中に、唯一地上から差し込んでくる光だ。